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🇨🇭🇬🇧🇺🇸🇫🇷に居住・留学し、25ヶ国を訪問する。ケンブリッジ大学、LSEへの留学を契機に文化芸術マネジメントの研究に携わる。現在は外資IT企業で勤務する傍ら、伝統医学(東洋医学、アーユルヴェーダ、ヨーガ医療)を勉強中です。

読書感想 深夜特急 沢木耕太郎

ゆっくりと長い時間をかけて、ずっと読みたかった本のひとつ沢木耕太郎の「深夜特急」を読了した。

引っ張り出してきた中学校の世界地図を見ながら全1巻から6巻と読書旅行のようなことをしてみた。

自分ひとりでは行く勇気のないイランや、行く予定を計画しているインドや、今まで訪れたヨーロッパやネパールを本とともに巡ることができた。

過去の海外生活を思い出して懐かしく思うこともあり、丁寧にまたひとつひとつ15歳から18歳で見た世界を描いてみたいと思った。

あの頃は、すべてが新鮮でホームシックを知らず、燃えたぎる野心を胸にひたすら躍進していた。怖いもの知らずのティーンエイジャーだった私は、日本にいる両親が見守るなかで、純粋に思いっきり自分の輝かしい未来に向かって突き進んでいた。

さて、筆者は26歳の若者である。入社初日に会社を辞め、大学時代の教授の紹介でライターを始める。しかし、仕事が増え始めた頃、友人との賭けで、ロンドンから電報を打つことを目的として旅に出る。

26歳というほぼ同い年の筆者の回想が、自分の情けなさを助長する。

遂行したいと思える定職につくわけでもなく、海外でヒッピーのように放浪している筆者は、不意に何を自分はしているのだろうか、と我に返るのだ。

私はまた、自分の人生の使い方、命の使い方を再考している。

現在の仕事を自分の時間を費やすことについて考えている。

この先、宙ぶらりんの足が地についていないような状態で、また長く収入がない旅に出始めることになるかもしれない。

そこには、やはりそこそこの年齢になってきていることからの負い目や不安がある。だからこそ、自分と同じような者を見つけた気がした。(だが、筆者はひとりで生きる力を私は感じていたし、実際に小説家として成功しているから自分と重ねてみることに迷いは少しある。)

20代後半に差し掛かり、旅の終わりどころが分からなくなってしまった筆者は、最後にどのように日本で待ち受けている現実に向き合っていったのかは描かれていない。

私は、そこの旅と始まる現実との繋がりにとても興味がある。

ふと終わってしまった深夜特急との旅は、呆気ないが、実際の旅も、人生も、いつ終わりが来るか誰も分からず、呆気ないものなのだろう。

 

旅の終わりは、旅の始まりでもある。

 

深夜特急1-香港・マカオ- (新潮文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/4101235058/ref=cm_sw_r_cp_api_i_vIYoCbFKB5W92

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